
10年前にはほとんどの獣医さんは個人経営のいわゆる「獣医さん」でした。ところがここ数年で、個人経営の獣医さんを見つけるのは本当に大変になってしまったのです。私には獣医さんとの関係は非常に大切です。NYに住んでいた時の獣医さんは知り合いでもあったので、金曜の夜でも日曜日でも頼まなくても私の犬たちを緊急に診てくれました。犬たちのこともちゃんと認識していてくれていたし、この子はこうしちゃダメというのもわかっていました。
この州に引っ越してきたのは7年前。その間に獣医さんを3回替えています。1回目の獣医さんは個人経営でしたが、その獣医さんについては次回に書く予定です。(Fear Free Certificationのブログをご覧ください)
2つ目の獣医さんも個人経営でした。ここ3-4年前には、個人経営の獣医さんを探すのは難しいことではなかったのです。この獣医さんを辞めたのは、個人経営でなくなったことに関係あることでした。
さて、話は戻ってアメリカの獣医療最大のプロバイダーはチョコレートのM&Mなどのキャンディの最大手Mars社なのです。Mars社はIAMS, Eukanuba, Royal Canin等のブランドも所有しているので、全く異分野に手を伸ばしたということでもないかもしれません。
The Atlantic Magazine によると、全米20-30%の獣医さんは大企業に所有されているとのことで、これは10年前の8%から大幅な増加だそうです。そして大型の動物病院にいたっては4病院中3院が大型企業の傘下にあるそうです。
そのほかにも所謂 Venture Capitalists などが買収を進めています。私の住む町では3世帯に1世帯が犬を飼っていますそうです(猫の統計は見つかりませんでした、ごめんなさい。)したがって獣医さんの数は、ERを含めて多く、非常に恵まれています。でも個人経営の獣医さんは5つくらいしかありません。他は、「あれ、なんか違うなあ」と、きがついた時にはすでに売却されたりしています。
大手に買収されたからといって悪いことばかりではないことも事実です。以下は私が思った普通の獣医さんでのPros &Cons(良いこと、悪いこと)です。
ポジティブなこと
1. 設備投資が行われ、新しい医療器具が購入される
2. 複数のドクターが雇用される
3. 多数のVet Tech(動物看護士)が雇用される
4. 営業時間が延長される
5. 企業なので、働く人の福利厚生が向上する可能性
それではネガティブは?
1. 治療費や薬代の高騰
2. 個人的な関係・個々のペットの直接的情報が薄くなる(獣医用ソフトウェアサービスがあっても)
3. 働く人の質が落ちる可能性
4. どの獣医が診察するかわからない場合もある
5. ターンオーバーが高い
6. 利益主義になりがち
ただ世の中こんなに明確でシンプルではないので、以上のPros & Cons は正しくないかもしれません。例えば、個人経営だから、貴重な存在であるからこそ、費用が高いということもあるでしょうし、給料も高いかもしれません。ただ、個人経営者の自分のビジネスに対する情熱と病院を売って一社員となった元経営者の病院に対する熱意が異なるのは否定できないことではないでしょうか。
ここでなぜ私が2つ目の獣医さんから3つ目の獣医さんに替えたかとの話になります。この2つ目の獣医さんはオーナーで、私の大学院(私は獣医スクールではありません)のVET SCHOOL出身であり、とても親切で、動物への応対も無理のない、ストレスが感じられないような優しい対応でした。診察や私と話しているときも、彼は犬と同じレベルになるように床に座っていました。
犬たちは幸い病気や怪我もあまりなかったのですが、そのドクターを指名すると何日も待たされることもありました。だんだん、何か変わったなあと思い出したのです。
一つには薬の値段があります。NYの頃からちょっと怪我した時用に常にうちに置いてある薬がありました。それも有効期限がかなり過ぎたので、怪我をした時に獣医さんに行ってその薬をもらってきました。NYの頃から使っているので値段はわかっていたので、もらってそのまま獣医さんを出たのですが、うちに帰って薬とEメールに送ってもらったレシートを見て驚愕!
まず薬は今までのように15mlのボトルではなく、大きなボトルから1日ずつをシリンジに分けた数日分で、計算すると値段は3倍くらいでした。アメリカではオンラインファーマシーで薬を買うのが普通なのですが、すぐに必要なものは獣医さんで買うしかありません。何か間違ったのではないかと電話すると、コストであると言われました。まあ、獣医さんは建物を借りている場合はそのコスト、従業員のコストなどで、オンラインファーマシーと競争できるはずがないとはわかってますが、でもそんなに取るの?
そして2回目のことはうちの犬を診察に連れて行った時のこと、すぐに見てもらいたかったので、いつもの獣医さんではありませんでした。私が持っているという薬を売ろうとして、本当に同じものなのか、本当に有効期限内のものなのかをしつこく聞いてきました。うちの犬が手術をした時に、外科手術の専門医が処方箋をオンラインファーマシーで使うようにくれたものなので、どこかにEメールがあるはずなのですが、必要な時に見つからないものです。最後には、その獣医さん、実物を持ってきて見せてくれとかまで言い出しました。獣医さん側から考えてみると、デュー・ディリジェンス(医師として適切なこと)をしているのかもしれません。
さて、私達、成人した人間の場合でも同様ですが、はっきりいうと私たちはドクターのアドバイスに従わなくてはならないという法律はありません。飼い犬の場合も同様です。ドクターが使用するようにといった薬を使うかは飼い主の自由なのです。それを実物をもってこいと言い出したのですから、このドクターはどれだけ経験があるのか、ペットオーナーは何も知らないと思ったのか、売上をいくら上げろというプレッシャーがあるのか、疑問に思いました。幸いにEメールが見つかり、私の持っている薬がドクターの勧めるものと同じで、また有効期限内のものであることを証明できました。
そして最後のトドメが、あるVet Techの態度です。私の4歳になる犬が専門医で突然ガンの宣告を受けました。ただガンがどの器官にあるのかが大学病院に組織を送ってもわかりませんでした。彼はただ弱っていくのみ。痛みはないようなのですが、常にクルクル回ったりと正常ではないことは確かでした。さらに別のテストの結果を大学病院から待っている間、すがる気持ちで、ただ彼を少し楽にできなかと、この獣医さんに連絡しました。そして同じ日の予約なので、また別の獣医さんです。犬を連れていくと、決定打となったVet Techが出てきました。彼女の仕事は獣医さんの前に、いろいろなことを尋ねることなのですが、その尋ね方、また犬への態度が非常に悪かったのです。
以前は3人ほどしかいなかったドクターは7人ほどになっており、ウェブサイトによるとVet Techは10人ほどになっていました。そしてGoogleでちょっと深く調べてみると、この獣医院は確かに企業に買われていました。フェースブックにあったオーナーが看板を綺麗にしているポストなども全て消されていました。
信頼できる獣医さんである友人が個人経営の獣医院に移ったことを機会に、その獣医さんに移りました。ということで、私だけでなく個人経営の獣医院をあえて選ぶ人は少なくはありません。でも時間的な便利さや、また問題もなくcorporate veterinary practiceに通っている人もいますので、どちらがいいとか、悪いとかは言えないのかもしれません。
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